福祉プラスのまちづくり事業vol.3ふくフク商店街

福祉プラスのまちづくり事業 vol.3
『ふくフク商店街』― 商店街に福祉を「潜ませて」みたら、日常が少し変わった
「イベント」と「日常」の間には、どんな景色があるんだろう?
福祉プラスのまちづくり事業の第三回目は、これまでとは少し違うアプローチを試してみました。それが「ふくフク商店街」です。
この企画の名前は、「ふくらむフクシ研究所(略して、ふくフク研)」から生まれました。ふくフク研は、埼玉県草加市発のプロジェクトとして、トークイベントや映画祭、お店ごっこなど地域での様々な実験を重ねながら、「福」祉の世界に新しい価値を「膨」らませ、また「含」ませていくための研究・活動を行っています。
そんなふくフク研の想いを込めて狙ったのは、**「イベントと日常の間」**という、これまで誰も開拓していなかった領域でした。
草加市の商店街に、福祉を「明るく楽しい形」で潜ませてみる
舞台となったのは、草加市の活気ある商店街です。地域の店舗の皆様に心から協力していただきながら、私たちが挑戦したのは、福祉を**「明るい形」「楽しい形」**にデザインし直して、商店街の各場所にそっと「潜ませる」ことでした。
「福祉のイベントです、ぜひ来てください」と呼びかけるのではなく、「いつもの商店街を歩いていたら、なんだか楽しいことに出会った」という体験をつくりたかったのです。
お店の一角に福祉事業所でつくられた商品を自然に並べてみたり、休憩場所の椅子を車椅子にして、車椅子を利用する方が商店街を当たり前のように行き来する景色をつくったり。
そんな小さな仕掛けを、まち全体にちりばめました。特別な会場を設けるのではなく、地域の人々が日常的に歩く商店街そのものを舞台にしたのです。
戸惑いから、にこやかな共有の時間へ
当日の商店街には、たくさんの車椅子を利用する方や障がいのある方々が自然に溶け込んでいました。
普段とは少し違う商店街の景色に、最初はまちの人たちも「どう接したらいいのだろう」と戸惑いを見せていました。これまで、これほど近い距離で障がいのある方と触れ合う機会が少なかったからです。
でも、一緒に商品を見たり、何気ない言葉を交わしたり、同じ空間で時間を過ごすうちに、その戸惑いは少しずつ溶けていきました。そして最後には、障がいのある方もない方も、まちの人たちがみんなでにこやかに笑い合い、ごく自然に一緒の時間を共有する、とても温かい景色が広がっていました。
「特別な場所」でも「特別な機会」でもない、いつもの商店街という日常の空間で生まれたその笑顔こそが、私たちが目指していた景色でした。
「潜ませた福祉」が、リアルなつながりと仕事を生んだ
そして、この「ふくフク商店街」が単なる一日限りのイベントで終わらなかったことは、私たちにとって何よりの喜びでした。本事業を通じて、いくつもの具体的で継続的なつながりが生まれたのです。
パン屋「おーぐぱん」さんとの新しい関係: この事業をきっかけに、おーぐぱんさんは就労移行支援の受け入れをスタートしてくださいました。さらに、お店で使うスタンプの制作を生活介護事業所へ発注してくださるなど、日常的な経済活動の中でのつながりが生まれました。
学術と福祉の出会い: また、就労継続支援B型事業所と大学とが出会い、新たな協働研究がスタートするという思いがけない展開も生まれました。
**「楽しそう」「面白そう」という入口から始まった関係が、気づけば本物の社会参加や就労支援、学術研究の形へと発展していく。**これこそが、制度の枠を超えた地域のつながりの力だと実感しています。
「潜ませる」という発想が開く、新しい福祉のカタチ
福祉を「前面に出す」のではなく、日常の景色の中に「潜ませる」。この発想は、ふくフク研が大切にしている考え方の一つです。
「福祉だから関わらなければ」ではなく、気づいたら自然に関わっていた。「障がいのある方を支援しなければ」ではなく、気づいたら一緒に楽しんでいた。そんな自然な関わりの積み重ねが、「だれもが幸せな」地域の日常をつくっていくのだと思います。
「福」 ― 福祉の本来の意味である「幸せ」を、もっと日常の中で感じられるものに
「膨」 ― 制度や支援という枠を超えて、福祉の可能性をふくらませていく
「含」 ― 地域の暮らしの中に、自然に福祉の温かさを染み込ませていく
ふくフク商店街は、そんなふくフク研の想いが、地域の皆様の温かいご協力によって一つの形になった事業でした。
これからも、「イベントと日常の間」を探し続けます
まちの人たちが自然に障がいのある方と触れ合い、笑い合う。そして、地域の店舗や大学が、福祉施設と当たり前のように仕事や研究で連携していく。
これこそが、私たちが目指す『みんなで創る「だれもが幸せな」あしたの暮らしと福祉のカタチ』です。
これからも地域の中に福祉を楽しく、そして自然に潜ませながら、一度きりのイベントで終わらない、地域の日常の中にじわりと染み込んでいくような仕掛けを、地域の皆様と一緒に作り続けていきたいと思います。
ふくフク商店街のその後の展開と、これからの新しい「潜ませ方」にも、どうぞご期待ください。
Date:2024.02.24 Client:草加市障がい福祉課 Role:デザイン・商品開発・イベント企画運営